君ニ恋シテル

「ぐああああぁぁ…!」

出口からお化けが這うようにして姿を現す。


「きゃあああぁ!」

思わずまた叫ぶ。


もうイヤー!
明るいところで見ると、さらにリアルで怖かった。

顔がぐちゃぐちゃ、服もぼろぼろで…。
手を伸ばし、こっちへ来ようとしている。

いやっ…来ないで!
思わず後退りする。


「ぐあぁぁ……」

と、お化けの動きがピタリと止まった。


え…?

ピクリとも動かなくなったかと思うと、お化けは這ってお化け屋敷の中へとゆっくり戻っていった。


な、なんだったの?

ホッとして、力が抜ける。


「…凄かったね。まさか追いかけられるとは思わなかった。しかも最後の最後で」

そう言って、笑顔を見せるてっちゃん。
…その笑顔を見た途端、胸がドキリとなる。


「うん…ほんと凄かった。怖かったね…」

っ…どうしよう。
なんか、今になって恥ずかしくなってきちゃった。

私…お化け屋敷の中でてっちゃんに抱きついちゃったんだよね…。

そのあと…ぎゅっと抱き寄せられて…。
急にそのことを思い出し、カァッと顔が熱くなる。

は、恥ずかしい…!


それに、手まで繋いじゃったし…。
これで手繋いだの2回目だね…。


ん…?手?


ふと視線を斜め下に向けると、私とてっちゃんはまだしっかりと手を繋いだままだった。


「わっ!ごめっ…」

私は慌てて手を離す。


「あのっ…ごめんね。私…怖がってばかりでいっぱい迷惑かけちゃって」

もう…ドキドキし過ぎて、てっちゃんの顔が見れない。


「そんなことないよ。迷惑なんて全然。優奈ちゃんと歩けて楽しかったよ」

優しい声。
ゆっくりとてっちゃんの顔を見ると、いつもの笑顔を見せてくれた。


「…ありがとう」

嬉しい…。
本当に、てっちゃんは優しいな。