君ニ恋シテル

てっちゃんと手を繋ぎ廊下を歩く。
体がふわふわする…。

怖さなんてもうないと言ってもいいかもしれない。

だって…隣にてっちゃんがいるんだもん。
繋いだ手の温もりが、安心感を与えてくれる。


抱き締められた感覚がまだ消えない。
ドキドキしてキュンってなっちゃう…。

てっちゃんに抱き締められたのは、今回が初めてじゃないのに…。

初めては…クジでハグを引いたあのイベントの時。

だけどさっきのは、その時と比べものにならないくらいドキドキした…。

全然違くて…。
立っていられないかと思った…。

幸せすぎてどうしたらいいのか…。
最初は入るのが憂鬱だったお化け屋敷。
それがこんな思いがけない嬉しいハプニングの連続。

これならずっとお化け屋敷の中にいてもいいかも…なんてね。

それはちょっと大袈裟かな?
でも、ほんとにそんな気持ちだった。



「もうすぐ出口かな」

体育館の入り口に着くと、てっちゃんが呟く。


目を凝らして向こう側を見ると、出口らしき場所から光が射しているのが見えた。

やっと恐怖から解放される嬉しさと、てっちゃんと2人きりの時間が終わってしまう寂しさで…複雑な気分になる。


「やったね」

「う、うん」

てっちゃんの言葉に頷くも、切なさで胸が痛い。

まだまだこのままでいたいよ…。
そう思いながらも、一歩進むごとに出口はどんどん近づく。


そして…

ちょうど体育館の中心に来た時だった。



「ぐがあああああーーー!!」



なにっ!?

突如、体育館中に奇声が響く。

その声に驚いた私とてっちゃんは、バッと後ろを振り向く。


すると、何者かがこちらに向かって全速力で走って来る姿が見えた。

えっ…!?
あっ、あれは……?
お、お化け…!?


「きゃっ…きゃあああぁー!!」

恐怖で思わず叫んだ。


「優奈ちゃんっ、走ろう!」

「…うんっ!」

てっちゃんに手を引かれ、出口に向かって精一杯走る。


「ぐああああああぁー!」

こっ、怖いよー!!


死に物狂いでとにかく必死で走る。
後ろを振り向くと、もうすぐ近くまで迫っていた。


ヤバイ、ヤバイ!


と…出口の光が見えた。
あと少しっ…!



私とてっちゃんは一気に出口を通り抜けた。

明るい太陽の光が私達を照らす。


「はぁ…はぁ…」

もうダメ…息が苦しい。

でも…逃げ切った。
やっと外に出れた。


「やったね…てっちゃ…」

と、てっちゃんに話しかけたその時…!