君ニ恋シテル

「そうだ…バースデーメールありがとね。嬉しかったよ」

「あっ、うん!よかった…」

ヤバイ…。
さっきまでの和やかな空気が一変し、急に気まずくなる。

気まずいと思っているのは私だけかもしれないけど…。

でも、気まずい…!
…今日はなにがなんでも絶対プレゼント渡さなきゃ!


そう心の中で決心していると…

「どっちに行こうか?右に行くと理科室で、左は家庭科室…」

別れ道に差しかかり、てっちゃんが言う。


どっちがいいんだろう…。
どっちに行こうが不気味なのは変わりないよね…。

なんで必ず教室に入らないと進めないようになってるのかな…ずっと廊下だけだったらいいのに。

必ず何かがありそうで…怖くなる。


「左に行こっか?家庭科室…」

なんとなく、理科室よりはマシな気がした。
ただそれだけの理由。

てっちゃんは私の言葉に頷き、扉に手をかけた。


家庭科室に入ると、焦げ臭いようなにおいが…。

うわ…何このにおい。
思わず鼻をつまみたくなった。
床には割れた食器が散乱している。

怖い…早くここから立ち去りたい。


「…てっちゃん、早く行こう」

そう言って思わず足を速めると…


わっ!


何かに躓きそうになった…
が、なんとか持ちこたえる。


「優奈ちゃん大丈夫?」

「う、うん」

何に躓きそうになったんだろう…そう思い下を見ると…


「…ひっ!」

そこには血がべっとりついた包丁があった。


やっ、なんで包丁が…こんなに血がついて…。
足がガタガタと震える。


「優奈ちゃん、よく見て。これは偽物。血もほんとの血じゃないよ」

てっちゃんは床にある包丁を拾い上げ、明るく言った。


「あ…偽物」

刃の部分を触ると、柔らかかった。


そっか…そうだよね。
本物を置いてるわけないよね。
危ないし…。

血だって本物なわけない…。
でも…作り物って解っててもじゅうぶん怖いよ。

心臓がもたない…。