君ニ恋シテル


◇◇◇

保健室。


「きゃああああー!」

「わぁあああー!」

みんな一斉に叫び声を上げ、保健室から飛び出す。


「えっ!ちょっとみんな待ってよ!」

優奈は一人出遅れてしまった。


急に何かが棚から落下し、その音にみんな驚いて逃げてしまったのだ。


慌てて保健室から出るも、みんなの姿はもうない。

薄暗い廊下がただただ続いているだけ。


嘘…私、一人になっちゃったの?
全く怖がってなかったスタッフの人までも一緒に逃げちゃったし!

どうしよう…。
静けさが恐怖心を煽り立てる。


ヤダ…怖いっ。
思わずその場にしゃがみこんだ。


一人じゃ無理だよ…。
怖くて一歩も動けない。

膝を抱え、その場にうずくまる。
泣きそう…。

恐怖で体が震えた。


すると…


「ぎゃあああああ!!」


突然ものすごい悲鳴が耳に入る。


えっ…何?
ドクンと胸が鳴ると同時に、誰かが私の前を凄い勢いで通り過ぎた。

あまりにも一瞬すぎて、何が起きたのかわからない。


今のは…誰?
女の人の声だった…。

ドキドキドキドキ…鼓動が早い。


呆然としていると…

今度は足音が聞こえた。
イヤな汗が頬を伝い、恐怖が全身を駆け巡る。

今度は誰…?誰なの?

どんどん足音が近くなる。


イヤ…来ないでっ!
ギュッと目を瞑り、またうずくまった。
体の震えが止まらない。


そして…

足音がピタリと止まる。

目の前にいる。
感覚でわかった。

怖い怖い怖い…!

言葉にならない恐怖が私を襲う。



「…あれ?」

その声にビクンと肩が跳ね上がる。


が…すぐあることに気づく。

待って、この声ってもしかして…
私はゆっくりと…顔を上げた。


「…優奈ちゃん?」

やっぱり…!

瞬間、涙が込み上げる。


「あっ…やっぱり優奈ちゃんだ!どうして一人で…って、優奈ちゃん泣いてる!?大丈夫?」

その言葉に、何度も何度も頷く。
涙が止まらない。

薄暗くてよく見えないけど、すぐにわかった。


私の大好きな人。
てっちゃんがいた。