◇◇◇

「ありがとう、西村さん。…じゃあおやすみ」

「徹平、西村さんなんだって?」

電話を切ると逞がすかさず話しかけてきた。


「何って、誕生日おめでとうってそれだけだよ」

「ふーん。0時ぴったりにかけてくるなんて凄いな。やっぱ気に入られてるよなぁ。今もしつこく遊ぼうって誘われてるんだろ?西村さんも懲りないよなぁ。ってか優奈ちゃんからはメールとかきてないの?」

そう言いながら逞は布団に寝転ぶ。


なんでいつも優奈ちゃん限定で聞いてくるんだよ…まあもう慣れっこだけど。

携帯には受信メールを知らせるマーク。
見ると優奈ちゃんからバースデーメールが届いていた。


「おっ、その顔は優奈ちゃんからきてたってことだな!嬉しそうな顔してー」

逞は布団から起き上がり、携帯を覗きこもうとする。


「見るなって。それに…優奈ちゃんだけじゃなく亜紀ちゃんと百合香ちゃんからも来てたし」

「ふーん。でもさぁ、優奈ちゃんからプレゼントがなかったのは意外だったよなぁ。亜紀ちゃんと百合香ちゃんはくれたのに。徹平、期待してただろ?」

そう言って、携帯を覗きこむのを諦めた逞は、今度は俺の顔を覗きこみいつものにやけ顔。


「期待って…別に俺はメールだけでじゅうぶん嬉しいし」

俺はほんとにそう思っていた。


「強がるなって!もしかしたら今日渡そうと思ってるのかもしれないしさぁ!今日が誕生日本番だし!」

ポンッと俺の肩を叩く逞。


「強がってないんだけど」

「またまたぁ!そういうのが強がってるって言うんだぜ?」

これ以上何を言っても無駄だと思った俺は、逞の言葉を無視した。


「どんまい!」

逞がまたポンポンと肩を叩く。

イラッとした。
強がってもいないし、落ち込んでもいない。


…ちょっと『あれっ?』って思ったのは事実だけど。

別にそんな…

「ほら暗い顔しなーい!」

逞の明るい声が耳に響く。
その態度に、更にイラつく。


「…もう寝る」

「えー!もう寝るの!?早くない!?」

隣でぎゃあぎゃあ騒ぐ逞を無視し、俺は布団に入り目をつむった。


「なぁ、寝るの?ってかもう寝た?」

そう言いながら、俺の体を何度も揺する逞。

うるさい…。




こうして色々あった旅行1日目は、どうにか無事?終了した。