この前沙弓ちゃんに言われた言葉…その話もしていない。

てっちゃんが私を好きかもって…このことは亜紀ちゃんにも話していない。

わざわざ言うのもおかしい気がするし…恥ずかしい。


「と、とにかく、私は普通に渡せたらそれでいいから」

もうこの話は終わりにしたかった。
恥ずかしくて、顔から火が出ちゃいそう…。


すると…

「ゆうにゃん、あなた徹平くんを好きなのよね?」

へ……。
百合香ちゃん突然何言って…。

私は瞬間的に固まった。

亜紀ちゃんも驚きの表情を浮かべ、百合香ちゃんをジッと見つめる。


私はなぜか押し黙ってしまう。

普通に受け流せばいいのに、それができない。

百合香ちゃんの声があまりにも真剣で、凄く意味ありげに聞こえたから。

…百合香ちゃんの言ってる好きの意味って…絶対。


どうしよう…。

ヤバイ…黙ってたら余計おかしいよね…。


慌てて喋ろうとすると、

「あのっ…」

「恋しているのね」

百合香ちゃんと声が重なった。



………………。



今、なんて言った?
…よく聞こえなかった。


ううん…正確に言うと、聞こえないふりをしていたのかもしれない。

亜紀ちゃんの表情を見ればわかる。

さっきよりもっと驚いている。


「恋…しているのね」

百合香ちゃんはもう一度、今度はゆっくりはっきりと、そう言った。

百合香ちゃんの顔は無表情で、感情が読み取れない。


「ゆ、百合香ちゃん何言ってるの?恋なんて…してないよ?普通にファンとして大好きなだけで…」

隠しているわけじゃない。
それなのに、口から咄嗟に出た言葉は否定の言葉だった。

百合香ちゃんは私の顔をジッと見つめたまま、ピクリとも動かない。

その無言の迫力に負けそうになりながらも、私はなんとか言葉を続ける。


「…ゆ、百合香ちゃんだって、てっちゃんのこと好きでしょ?」

そう言った直後、私はふと思った。

そうだよ…もしかしたら百合香ちゃんも、てっちゃんに恋してるかもしれない。

今までだって、なんとなくそう思った時があった。


百合香ちゃんはてっちゃんの熱狂的なファン。
…でも、百合香ちゃんの想いは、ファンとしての想いなのか、恋なのか…わからずにいた。

本気で好きな可能性だって…