君ニ恋シテル

「徹平くんも、優奈ちゃんを好きだと思うんだ」


………。


一瞬、沙弓ちゃんが何を言ったのかわからなかった。

優しく笑う沙弓ちゃん。


「…そ、そんなわけないよっ!」

ありえない。
てっちゃんが私を好きなんて…。
そんなこと…。

突然の沙弓ちゃんの発言に頭が混乱する。



「そうかなぁ?逞もそう思ってるよ」

沙弓ちゃんはそう言いながら、アイスコーヒーを一口飲んだ。


逞くんもそう思ってるって…そんな、何を根拠に。
 
「で、でも…ありえないよ。それに…てっちゃんは芸能人で、私はただの一般人。好きになってもらえるはずが…」

やっぱり私の中には、まだその想いがあった。


友達という形になっても、芸能人と一般人という関係には変わりはない。

やっぱりどうしても、こんな自分と思ってしまう。


「優奈ちゃん、それは関係ないと思うよ。私も最初は一般人で、逞のこと芸能人って目で見てて、自分に自信が持てなかったけど…そんなの気にしなくていいんだよ」

「そう、なのかなぁ…」

「そうだよ!優奈ちゃん可愛いんだから、自信持って」

「か、可愛くないよ」

サラッと可愛いと言われ、私は赤面した。


「徹平くん、絶対優奈ちゃんのこと好きだから」

「っ…そんなことないって…」

恥ずかしくてどんどん顔が熱くなる。


確かにみんなで出かけた時や、夏祭りでドキドキするようなことはあったけど…。
だけど、あれは別に…。

ほんとにてっちゃんが私のことを好きだったら…ヤバイよ。

嬉しすぎて気絶しちゃうかも。


って、ありえない、ありえない!
沙弓ちゃんはああ言ってるけど、そんなの夢のまた夢…。


すると…

「どうぞ」

音もなく急に現れたのは、店員の池田さんだった。

私と沙弓ちゃんの目の前に、ガラスの器に入った美味しそうなバニラのアイスクリームをコトンと置いた。

え…これ頼んでないよね?


沙弓ちゃんを見ると、

「ありがとうございます」

と、笑顔で池田さんに言った。


私は池田さんに視線を向ける。

え…今、池田さん笑った?
なんとなく、うっすらだけど微笑んだように見えた。

あまりにも一瞬過ぎて…。

池田さんはアイスを置くと、いつもみたいにさっさと立ち去ってしまった。


行っちゃった…このアイスは…

「沙弓ちゃんこれ…」

「池田さん夫婦からのサービスだよ」

サービス?
まだよく意味を理解できない。