◇◇◇

熱愛報道から数日。


優奈は一人街をブラブラしていた。


今日はバイトはお休み。

何か用事があるわけではないけど、ただ家に黙っているのは落ち着かなくて…。

てっちゃん達からは大丈夫ってメールの返事が来た。

でも…やっぱり、心配だよね。

実際今どんな状況なのか、全くわからないわけだし…。


私は曇り空の下ぼんやりと信号待ちをする。


Boy★2のファンの子達も、ネットの掲示板で大騒ぎしてたな…。

凄くショックを受けてる子もいた…。

もしこの熱愛報道がてっちゃんと西村陽花だったら、私も絶対ショックを受けていたと思う。

素直に二人の幸せを願えるだろうか?

…考えただけで、泣きそうになる。

ファンの子達の気持ちが痛いほどわかって、複雑な気分だった。


信号が青に変わり、一斉に人が歩き出す。

…いけない、ボーッとしちゃってた。

早く渡らなきゃ…慌てて走り出すと、前から歩いて来た人とすれ違い様に肩がぶつかってしまった。

「あっ!…ごめんなさい」


振り返り咄嗟に謝ると…

「え…沙弓ちゃん…?」

私が小さく呟くと、帽子を深く被った女の人がゆっくりと顔を上げる。


「…優奈ちゃん?」

「沙弓ちゃんっ!」

やっぱりそうだ。
そこにいたのは沙弓ちゃんだった。
まさかこんなところで会うなんて。


「今日はお休み?」

「うん」

笑顔で頷く沙弓ちゃん。
いつもと変わらないように見えるけど、その笑顔はどことなく元気がないように見えた。

そんな沙弓ちゃんの姿に、私は切なさで胸がギュッとなる。


「優奈ちゃん…今って時間ある?よかったら少し話さない?」

「…うん!いいよ」

大きく頷くと、沙弓ちゃんはニコッと笑った。


そして…

私達はあのファミレスに向かって歩き出した。

てっちゃん達と出会った、大切な場所。


歩いていると、曇り空から光が射す。

どんよりとしていた空は、青空へと変化した。

ジリジリとした暑さに、汗が流れる。

沙弓ちゃんと二人、こんなふうに歩くなんて、なんだか不思議な気分だった。