「ゆうにゃん」

「あっ、百合香ちゃん」

「お祭りは楽しめたかしら?花火は見れた?」

「うん、見れたよ」

「…そう。無事合流できてよかったわ。みんな心配していたのよ」

「ごめんね、心配かけて…」


と、数秒間の沈黙のあと、

「手…」

百合香ちゃんがじっと私の手を見つめ呟いた。


「手…?」

えっ…何。なんで、手って…。
急に心拍数が上昇する。

百合香ちゃんの視線が、私の手から離れない。


…っ。

もしや…てっちゃんと手を繋いでたの見られてたとか!?

…ううん、そんなはずはないよね。


「手…がどうしたの?」

ドキドキしながら返事を返す。
緊張のあまりか額に冷や汗が滲む。
苦笑いに裏返る声。
最悪…。


と、次の瞬間ギュッと手を握られた。

「っ!?…あの?」

なに?


「ゆうにゃん、手がベトベトよ」

「えっ!!」


一言そう言うと、百合香ちゃんはパッと手を離し、

「私も苺飴食べたくなっちゃったから買ってくるわね。渡辺さん!瀬川くん!私も一緒に行くわ!」

そう言って足早に行ってしまった。


ほっと安堵するも、すぐに百合香ちゃんが言った言葉を思い出し咄嗟に手を見つめる。

そんなにベトベトしてたかな…?
確かに緊張で、ちょっとは汗ばんでたかもしれないけど…。

てっちゃんもそう思ってたらどうしよう…。


………。


掌を見つめながら、ガクッと肩を落とす。

でも…初めて手繋いじゃったんだよね。
やっぱりそれは、とても嬉しい出来事で…大切。


大切すぎるよ…。

そう思ったら、胸が小さくトクンと鳴った。