「よーし!とりあえず一回りしようぜー!」

「おー!」

逞くんの声に元気に返事をする洋祐くん。


その様子に小さく溜め息をつく百合香ちゃん。

前回同様、逞くんの行動に冷や冷やしているみたい。


「優奈ちゃんは、何か食べたいものとかあるの?」

「えっ…あー、私は、えーっと…」

いきなりてっちゃんに声をかけられ、緊張で頭が真っ白に。


えーっと、えーっと…。

横からてっちゃんの視線を感じる。
どうしよう、ますます緊張してしまう。
お願いだから、そんなに見ないでほしい…。

ダメだ、何も浮かんでこない。


そのままそーっと横を向き、目と目を合わせ苦笑い。

意味不明…。

だけど、そんな意味不明な私の苦笑いにも、てっちゃんはいつもの笑顔を返してくれる。

その瞬間、押しつぶされそうなほど、胸がきゅーっとなった。

今の私の頬は、あの提灯よりも真っ赤だと思う。


なぜかな?
いつも以上に胸が高鳴って、苦しい。

きっと、夏祭りのせいだ。
そうに決まってる。


まだ来たばかりなのに、もうこの雰囲気にのまれそうになってるなんて…。

子供みたいで恥ずかしいけど、完璧心が浮かれてる。


てっちゃんと過ごせるのが、嬉しくて嬉しくて…仕方ないんだ。


様々な屋台が立ち並ぶ賑やかな公園。
みんなで歩いてるだけで、とても楽しくてワクワクする。


…と、歩き出し暫くした頃、私はあるものに目を奪われた。

水に浮かぶ色とりどりの丸い物体。
…水風船だ。


可愛い…!

ちょっと見てみようかな。
気付けば私は引き寄せられるように、一人ふらりと近づいていた。


わっ…ほんとカラフルだなぁ。

赤に黄色に、ピンク。
涼しげな水色やグリーン。
黒や白もある。
みんな、全部が可愛い。

周りを見ると、水風船を釣ろうと必死になる子供たち。

私も欲しいな…やってみようかな?
けど、釣れるかな?





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