「あれ?…あの子帰っちゃった?」

まだぼんやりした亜紀ちゃんが私の隣の席を見て呟く。


「うん、さっき行っちゃったよ」

「嘘ぉ、ぼーっとしてて気づかなかったよー。想像通り超個性的な子だった!ちょっと話してみたかったなぁ」

そう言いながら亜紀ちゃんは手に持っているピックを見つめた。


「ふふっ、逞に貰っちゃったぁ!嬉しすぎ!優奈もよかったね!
ってか、徹平何気に凄いことしたよね!あの行動はヤバイよ!」

亜紀ちゃんはニヤニヤして私を見つめる。


「えっ、ヤバイって…」

「だって優奈は私みたいに叫んだりもしてなかったじゃん?それなのに徹平から進んで渡してきたんだよ!きゃあー!どうする優奈!」

「ど、どうするって…」

「気に入られてるって、絶対!」

「えぇ!?」

亜紀ちゃんの言葉に大きく心臓が跳ね上がる。