君ニ恋シテル

「あぁーもっと前で見れたら逞にアピったのにぃ!
逞ー!って。そしたら亜紀ちゃんだ!って気づいてもらえたかも!うわーん!」

亜紀ちゃんの言葉を、私はぼんやりとした頭で聞く。

アピール。
亜紀ちゃんならやるだろうな。
気づいてもらえるまで、逞くんの名前を呼び続けそう。

私は…きっとできない。
黙って見てるだけ。

もし今日、前のほうで見れてたら、二人は私たちのことを気づいただろうか?


列がゆっくりと前に進む中、

「気づいてもらえたかな?」

頭で考えてたことが自然と言葉に出る。


「わかんない!
だけど、とにかく逞の視界に入りたかったの!」

亜紀ちゃんは手足をじたばたさせた。


その姿がなんだか可愛くて、私は笑った。

「あははっ!
だよね、私も入りたかった!」

大勢の人の中、てっちゃんの視界に入れたら、きっとそれだけで嬉しくて、舞い上がっちゃう。