逞も察したのか声のトーンを落とした。

「でもさ、優奈ちゃんって制服のまま握手に来てたじゃん?
あのあと仕事してたってことは、仕事抜けてイベントに来たのかな?
しかも優奈ちゃん一人で来てたっぽいし。
亜紀ちゃんいなかった」


そういえば…

「どうなんだろう?」

「ってか、あの転んだ子印象に残ってる」


いきなり話変わったし…。
逞はいつもそうだ。

「うん、俺もあの時はビックリした。
咄嗟に助けに行ったけど、あの行動は正しかったのかな…」

俺はあの時のことを思いだす。

起き上がるのを助けたあと、睨みつけるような目で転んだ子を見てた子が何人かいた。


「…正しかったと俺は思うけど。
だったら俺もだよ。
優奈ちゃんの服可愛いって言っちゃったじゃん?
優奈ちゃんめっちゃ睨まれてた。
しかも、あの転んだ子も優奈ちゃんのこと睨んでるように見えたし」

「あぁ…うん」

「とにかくさ、そんなこといちいち気にしてたら、ファンの子達とコミュニケーションとれないじゃん?
だから…気にしない!」

そう言うと逞は笑顔でケーキを差し出した。