手を繋ごう―瞳を開いて私を見て―【完】

店員さんが去ると、空さんは煙草を取り出した。

火を点けると、銜え煙草をしながら、おしぼりで手を拭き、私を見た。



「ん?何か付いてる?」


「“海都が好き”って、書いてある」



「……」



いきなり、何て事を。

頬が少し暑くなった気もするけど、ガンガン効いてる冷房のお陰ですぐに冷たくなった。



「今は好きにさせてやれ。飽きるか後悔するまでは」



「海都は、何も感じてない。何も考えてない。それでも“飽き”と“後悔”が来るの?」



「大切なモノを思い出せば、な」



空さんはそれだけを言うと、届いたコーヒーをブラックのまま飲む。