わかってた。

自分が下した現実なんだと。

わかってた。

なのに胸には、痛みが走った。



「深い事は聞かなかった。でも、海都は萌ちゃんと付き合ってたよな?好きだったんだろ?」



「……」



好きってだけで、物事が簡単に進められたら。

素直で居れたら、上手く行ってたかも知れない。

親父を理由にして逃げた俺は、ダサい男でしかなかった。

大切な女を、自分の馬鹿な考えで手離した。

紛れもない事実に悔やむ俺に、吏良はため息を吐き、「馬鹿」と小声で言う。

…本当に、そうだ。



「お前は誰に似て弱いんだ!」



しかし吏良は、親の気分で怒鳴ってるのだろうか。