近寄って見ると、思っていたより高身長。
もしかして…、
「…王子さま?」
黒い影にそう声を投げれば、
「ひぃいぃいぃ!!」
……。
あれ、空耳かな。
王子さまから随分と間の抜けた声が聞こえた気がした。
「あの…」
振り向いた王子さまに、息を奪われた。
……きれい。
艶やかな黒髪は、暗闇の中でも濡れたように光り。
意志の強そうな切れ長の瞳は、意図せずとも平伏してしまいそうな。
思わず、ほうっ…と息を吐いた。
…やっぱりさっきのは、あたしの勘違いだ。
こんな王子さまがあんな情けない声を出すわけがない。


