それから毎日

凶器を探した

部屋の中の備品

トイレ用品

バスルーム



だが

僕の手に入る刃物は

髭そりだけだった

頭を殴打出来るような重い灰皿も

花瓶もない

こんなボロボロの身体で

首を絞めて殺すには

相手は強すぎた




だが僕は毎日狂ったように

男を殺すことを考え

男を殺せる凶器と方法を探し続けた




なぜか男に対して

憎しみという感情は

見当たらなかった

あんなに殴られて

犯されてヤク中にされて

それでも驚くことに

憎悪で殺すわけではないのだ

僕が兄と再び逢うために

殺さなきゃならない

殺さなきゃ逃げられないから

逃げられなければ

死んでしまうから

死んだら兄に逢えないから

だから殺して逃げるしか

もうすべがない…




だって

ここまで堕ちたのは

自分のせいなんだから

この男に出会うような陰惨な場所を

僕は選んだんだから




ヤツに止められたあの時

あれが最後の分かれ道

岐路…だったんだ

バカなのは僕

それだけ

裏のある誘い水

どこかでわかってた




引き返せる猶予を

僕は見て見ぬ振りをして

闇に溺れた

自分を信じられない地獄を

見たくなかった





神が兄の罪を…裁い…た…と…

あの時…あの時…神父…が…