「…そうして僕らは長い物語を終え
たんだ…長い長いお話は…これで終
わり」
「これで…全部か…」
「そう…これで全部」
「おつかれ」
「ありがとな」
ある冬の寒い日
兄の納骨が終わってしばらくして
僕は久しぶりにヤツと会った
枯れた街路樹から斜めに日が差して
雲の多い晴れの日だった
「久しぶりだな…ここ…」
「ああ…高3のクリスマス以来だね
…一緒に来るのは」
僕達は教会の重い扉を開けた
いつもの通り誰もいない
ガランとした礼拝所で僕達は
うしろの椅子に腰をかけた
こいつにだけは全部話したかった
愛する人を見送ったこいつに
あのときのこいつの告白に
僕がいま追いつく
自分のためにも話したかった
理由はよくわからない
吐き出してなにか変わりたいとか
そういう意図もなかった
ただ話してしまいたいだけ
それ以外は無意識の下で
僕にわかることはそれだけだった