それから少しして
彼はよく眠るようになった
朝に吐く頻度が増えた
痙攣の発作も
脳圧が上がってると院長が言った
ステロイドが処方され内圧を下げる
楽になると彼は言う
会話が減ってきている
院長に僕だけ呼ばれて話を聞いた
覚悟しておいたほうがいい…と
そのことだった
ゆっくりと…でも確実に
彼の身体が旅立つ準備を始めた
毎晩キスして帰る
次の日にはもう
往ってしまうかも知れない
彼と僕が毎日を悔い無く過ごす
もうそれしか考えられなかった
僕は実家に電話した
彼がまだ意識があって話せるうちに
両親に会わせたかった
電話で兄がもう長くないことを
母に告げた
無言になった母の電話を
ずっとそのまま聞いていた
「すぐに…行くわ…お父さんと」
最後に母はそっとそう言った
「わかった…待ってるよ」
僕がそう言うと母は電話を切った



