「未知の領域はいつも不安なんだ…
それはみなそうだって思う…私にと
って死は未知の世界だ…でも体験者
がいたら私は旅行に行く前のガイド
ブックみたいにそれを聞ける…その
とき死は喪失じゃなくって新たな旅
の始まりってことになる…まさか君
がそのガイドだったなんて…それは
…ほんとにスゴイことなんだ…意識
は無くならないんだね…驚きだ…」
彼は噛み締めるようにつぶやいた
「役に…立ったの?」
「ああ…このうえなく…」
「よかった…よかっ…た」
僕はあまりの安堵感に
それ以上何も言えなかった
「君は最高だよ…私の天使だ」
悲しみがとけていく
もつれた糸が解きほぐされ
きれいに巻かれていくみたいに
彼が得たこと
僕が体験したこと
それを互いに交換して
僕らは次の世界に行こうとしてる
悲しみさえふりほどいて
苦しみの糧が慰めに変わる
彼の凄惨な体験の昇華が
僕の空虚に光を与え
僕のあの薬漬けの日々さえ
彼の苦しみを和らげる魔法に変えて
ああなんて
この世は愛しいんだろう…



