買い物に行くと告げて
ひとりで街に出た
ひとりになりたかった
すこし考えたかった
混乱してるのは僕も彼も同じ
僕がしっかりしなきゃいけないのに
弱っていく彼のほうが
僕を支えてるのが苦しい
少しでも一緒に居たいけど
今はちょっとだけ時間を貰いたい
心を建てなおす時間を下さい
僕のために治療をしたいという
彼の言葉に驚いて
今もそれが頭に響いて離れない
遅すぎた
なにもかも時が僕達を動かしてる
それが完璧だという事を
理解するのはいつも
そのエピソードが終わってからだ
それまでこの悲しみと付き合うのか
そう思うと愕然とする
いまはひとりになりたい
チェーンのカフェにふらりと入る
ホットコーヒーを注文して席に座る
笑いながら死を語ってた彼が
僕のために延命を望むことを
それがもう間に合わないことを
心が砕けるような気もちで
聞いていた
そんな彼を見ていられないくて
泣きかけた自分を見せられなくて
病室を飛び出して…
泣くことしか出来ない僕の涙が
人を苦しめる凶器に思えた
なぜ悲しいんだろうか
僕はなぜ悲しんでいるのだろうか
そんな根本的な疑問が生じる
なぜ彼の死はこんなに苦しい?
いや…死はなぜこんなに悲しい?
コーヒーカップを両手で包む
彼の手のぬくもりを思い出した
あれが永遠になくなるんだ…
永遠にもう…戻ってはこない
あの声があの姿がもう二度と
あの笑顔が永遠に
失われるんだ
それが僕の
悲しみの
原因だった



