失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】





それは兄が言ったことと同じだった

“お前がいるから俺は死なない”



「さっき…君が着替えを取りに君が

帰った時院長に相談したんだ…私が

今からできる治療があるのかって」

「え…ほんとうに?」

僕は驚いた

「うん…こんなこと相談するなんて

思っていなかったよ…どうすれば君

と少しでも長く暮らしていけるか…

可能性があればなんでもしたいって

…そう思ったから」

「い…院長はなんて?」

僕は椅子から思わず立ち上がった

彼は自分の手を見つめて言った

「…遅い…って」

「そん…な…手術とか…抗ガン剤と

か…あるじゃないか…」

「もう…そんなステージじゃ…ない

…三ヶ月前なら…なんとか手は打て

たって…私が…バカだった…」



ああ…そん…な…

僕は立ちあがったまま

動けなかった



「なぜ…だよ…」

「君…」

「ごめん…ちょっと…いま…無理…

だ」



ごめんね

泣いていいかな

もう泣くのはやめようって

思ったのに

僕が悲しむと

彼が苦しむのに…