「言いたくないことは話さなくてい
いよ」
彼は再びうなずいて言った
「ありがとう…じゃあベッド起こそ
う」
彼は馴れた様子で身体の位置を変え
電動ベッドのスイッチを押した
「これで君がちゃんと見える」
「横になっていても良かったのに」
「視野がちょっと狭くなってる」
「えっ…い…いつから?」
「ずいぶん前だよ…引っ越してから
だけど」
彼…黙ってた
「なぜ言ってくれなかったの?」
「言い出せなかったんだ…あの部屋
に居たかったから…先生にも言って
ない…でも君にバラしちゃった」
彼は寂しげにそう言った
僕は何も言えなくて彼の顔を
じっと見つめたまま言葉を探した
「こんな風に気持ちが変わっていく
んだね…先のことは予想もつかない
な…私はひとりで気楽に死んでいく
つもりだったのに…君に出会って…
君を置いていくのが悲しくてたまら
ない」
窓の外の街の景色を眺めながら
彼はそう呟いた
「自分が死ぬことは前と変わりない
気持ちなのに…君を悲しませるのが
…ほんとうに…イヤだ」



