「無理なら断ってくれていいんだ」

君が欲しいと言ったその言葉と

同じテンションで彼はそう言った

「君が無理に私に付き合うなんてい

う状況は御免だ…むしろそれなら私

が断る」

だがそれを言う彼は満足げだった

「言っただろう?…思い残すことは

ないんだよ…でも君と居たい…この

2つが同じ心の中にある…自分でも

不思議なんだ」



それを聞いて僕は

不思議と納得していた



自由なんだ

あなたは自由なんだね

囚われなくていい

そして欲しいものを欲しいって

こんなに無邪気に言える

彼のこの一年になにがあったのか

僕にはわからなかったけれど

彼はなにかを越えて

真の自由を手にした

それがわかった



「…あなたが望むなら僕は…いや…

僕が一緒に居たいんだ」

こんなことを言っても迷惑じゃない

彼の確信に満ちた顔を見ていると

そんな風に思えてきて

僕は彼に自分の望みを打ち明けた

「あなたと一緒に…居たい…」

彼はにっこり微笑んで言った

「やっぱり君も?…良かった…あり

がとう…すごく嬉しいよ」



誰かに似てる

この無邪気な感じ

不意に駅の改札で手を振る母の姿が

記憶に甦った

…確かにこれだ

こっちが照れちゃうほどの無邪気さ



罪悪感の失われた兄は

母の遺伝子が開花していた