失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】




やはり兄は実家に帰るつもりはない

と両親に話した

“ここで私は終わろうと思います”

と…

母は気丈なフリしてこう言った

“そうね”と

“あなたの好きにしてね…でもいつ

でも待ってるから…気が変わったら

連絡してね…”



「私…うまく言えたかしら…」

母は翌日もボーッとした様子で

僕を相手にぽつぽつと昨日のことを

食卓でお茶を飲みながら話した

晴れた昼下がりだった



父はあのあと遅く帰ってきて

酒を飲んでシャワーを浴びて

すぐ寝てしまった

今朝もやつれた顔で出勤していった



何もかもが変わった

そしてなにも変わってない実家の

いつもの食卓

このタイミングで僕が帰ってこれて

なんか良かったんだな…

母の話し相手をしながら

しんみりそう思えた

「胃の具合大丈夫?」

あんなショックのあとで

また吐血しないかと心配だった