失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】





僕はそれから

とりあえず実家に戻った

彼の父が状況を説明するために

兄の病院から直接実家に

僕を送ってくれたのだ

オヤジに対する恨みや怒りは

記憶のない兄に逢って

どこかへ消えてしまった

秘密が秘密でなくなったいま

僕がもし発作を起こしても

それに対して恐怖感がない

実家に帰ってももう傷つく者はない

いつの間にかそんな日がきたことに

僕は少し遅れて気づいた

それは複雑な気持ちだった

ただの単純な安堵だけじゃなくて

秘密に怯えて暮らしてたあの歳月の

悔しさと悲しさとが



その秘密に終止符を打った

あの人との不思議な2ヶ月に

それでも僕は深く感謝した

僕は居場所を取り戻した

前とはちょっと違うけれど




僕が帰ってすぐ父と母が兄に会いに

あの病院へ行くことになった