失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】




「親父の心の中を思うとそれを言っ

ちゃいけないと思った…兄貴と血が

つながってないのは家族の中で親父

だけ…兄貴の失踪が自分のせいかも

知れないって親父が自分を責めて苦

しんでるのは僕には痛いほどわかっ

てた…だから虚ろな親父の顔を見た

ら…それ以上責めるのは僕には出来

なかった…でもそうすると…僕には

怒りのはけ口が…なんにもなくて…

吐き出せることも吐き出せる人もい

ない…じゃあ前向きに新しい興信所

の担当者とまた一から関係を築くな

んてその時は絶対無理だったし…ま

ぎらすしかなかった…それで意識を

無くしたくて…飲んだ…何も考えら

れなくなりたかったんだ」



その時の悲しさと自暴自棄な感覚が

胸の中によみがえってきた

あのことさえなければ…

僕はクスリなんかに溺れなかった

あんな苦しみを味わうことは…

「…親父が…僕の気持ちを…少しで

もわかって…くれてたら…」

不意に涙が込み上げてくる

家族に…父親に…


「わかって…欲し…かったんだ…」


無理だとはわかっている

家族全員…ギリギリだった

そして決して理解されない僕の秘密


「…耐えられなかった…生きてくこ

とにも…耐えられなかったんだ…打

ち明けることが出来ない秘密の重さ

にも…押し潰されそうになって…誰

にも…誰にも頼れないことにも…」

窒息しそうなほど

あの日僕は孤独だった