「君にレポートを書いてもらいたい

…ヒマだろう…寝て起きて簡単な家

事をするだけならヒマ過ぎて考えな

くてもいいことを考える…精神衛生

上良くないからな」



と変な日常が少し過ぎた頃

彼は僕にワークを課した

「なに書くの?」

「時系列で…薬物依存の起きた順に

きっかけと経緯…だな…まずは」



彼は有無を言わさず僕に

レポート用紙を押し付けた

「鉛筆?…ボールペン?」

「なんでも…いいけど」

抵抗がかなりある

書かされる

書きたくない…というか

思い出したくないんだ

でも仕方ない

それで彼の仕事が完成するなら



だがふと思った

これが上手くいけば

少しでも苦痛から解放されて

壊れた人生を取り戻せる可能性が

誰かに生まれるのかも知れない…と

僕がこうやって彼のおかげで

壊れかけた精神と身体を

薬物から救ってもらった

それと同じように



それは彼と僕が出逢い

結ばれないまでもそれは無駄では

決してなかったということになる

そのことが…



今の空白の中にある僕の心の

支点になるんじゃないのか…と



そう思った瞬間僕は

思わず顔を挙げ彼の顔を見た

「誰かの…ために…なるかな…」

彼は少し驚いたような顔をし

そしてクスッと笑った

「ああ…もちろんだ…私が作るプロ

グラムは画期的なんだ…君の協力は

必要不可欠だがな」

「…できることをしたい」

彼はうなづいた

「では早速取りかかろう…君がまず

アルコールにハマったきっかけを書

くんだ…まさかその前にはやってな

いだろう?」

「…パニックの薬は?」

彼はああ…と言って

それをパソコンに打ち込んだ

「あとから書いておいてくれ…今は

アルコールからだ」