失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】




「どうした…?」

不審そうな彼のその声を聞いて

僕は自分の口を手で押さえた

でも笑いは止まらなかった

「くっくっく…」



空が広い

広すぎる

空白だ

明るくて果てしなくて

なにひとつない

みわたす限りの…空白…



「あーっはははははは!」



手を伸ばしても誰もいない!

自由でひとりでなにもない!



「あああああああぁっ!」


突然叫んでいた

止まらないしどうでもいい

なにかの線がキレたのか

フタがハズレたのか知らない

「うああああああっ!」

彼の手が僕の両肩をつかむ

「どうした?…言うんだ」

なにを?

「あぁぁぁぁぁあああ!」

もういいでしょ

僕は自由だ

なにもない



「あっはぁはぁはぁっ!」

首から力が抜けた


自然に天井を向いてた

「うっくっくっくっくっ」

「どうしたんだ?…いまなにを感じ

てる?」

彼が必死で冷静に尋ねる

「あは…もういい…いいんだ…!」

「何がもういいんだ?」

「全部!…全部だよ!…あははは」

彼のとまどった顔

見てたら急に淫らな気分になった