失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】




「そこか…」

彼はしばらく目を閉じた

それから独り言のように呟いた

「だから神…か…」


なにが"だから"なのかは

僕にはよくわからなかったが

彼がしばらく沈黙したあと

かすかに苦笑しているのがわかった

僕は思わず目を開けて彼を見た



「可笑し…い…?」

「いや…君を笑ったわけじゃない…

自分を笑ったんだ…自嘲だ」

「なん…で…?」

「いつものヤブへびだからだ…それ

も出たのが化け物だ」

彼はまた笑った…自嘲?

「だから…ヤブヘビ…ってなに?」

あの時は訊きそびれたけど今度は…

「『ヤブをつついてヘビを出す』と

昔から言うんだ…余計なことをやっ

て災難に遇う…というような意味だ

…この遭遇はヘビじゃ済まないな…

世界の終わりとの遭遇…とでも言お

うか」

彼は軽く首を左右に振った

「手強い相手が出たもんだ…闇が深

すぎる…闇?…闇すら届かないかも

知れないな…」

彼は真顔に戻っていた

「フランクルの言葉を思い出す…

"人生に意味を問うな…人生の問い

掛けに汝が答えよ"…と」