失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】




朝食を終え薬を飲まされ

少しだけ悲しみが遠ざかった

安定剤なんだろうか

あまり頭が働かない



彼はノートパソコンを前に

なにかしていた

仕事かなんなのかはわからなかった

雨上がりの湿度の高い蒸し暑さで

彼が空調を入れた

エアコンの音と広がる空気の乾燥が

肌に心地よかった



「着替え…あるのかな…」

僕が彼に聞くと寝室のチェストから

Tシャツとスウェットのズボンを

出してきてくれた

「洗濯機の中に君の服を放り込んで

おいてくれ」

「うん…わかった…洗濯しておくけ

ど…あなたの洗う服も出してもらえ

れば」

「じゃ…頼む」

下着類を無造作に渡されて

彼と自分の服を抱えて洗面所に行く

昨日使ったバスタオルも一緒に

全自動の洗濯機にそれを放り込んだ



投入した洗剤が水に溶けていくのを

ボーッと眺めていた