「これが…お兄さんの資料だ」
ゆっくり彼は立ち上がると
ソファーの脇に置いてあった
黒いアタッシュケースの中から
A4の茶封筒を取り出した
「まだ会わせることは出来ない…君
に危険が及ぶ可能性がある…監察が
動き今回の一件にカタがつくまで待
ってもらいたい」
そう言うと彼の父親は
ソファーの上で膝を立てうずくまり
膝に顔をうずめている僕の前に
その封筒をそっと置いた
「あとは…任せた」
彼の父親は小さく彼にそう言うと
僕たちを残して部屋を去った
静寂が訪れた
彼も僕も身動きもせずに
しばらくそのままで止まっていた
外からかすかに車の流れていく音
部屋の中の静けさが際立つ
どのくらい時間が経ったのか
彼がソファから立ち上がる音がした
思わず伏せていた顔を上げた