失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】




「だが本当の父親はあんただ…」

彼は鬱陶しそうに言った

「なぜそれがわかる?」

彼の父親は驚いて訊き返した

「麻薬捜査官になってからあんたの

毛髪でDNA鑑定した…だから間違い

ない…あんたの信じたファンタジー

は期せずして本当だった…救われた

か?」

「うぅ…」

うめき声と共に彼の父親は

再びソファーに倒れこみ

上半身を背もたれに埋めた

「今日1日で10年分ぐらい歳をとっ

てしまいそうだ…髪の毛なんて…い

つ?」

「忘れたのか…あんたの自宅に呼ば

れたじゃないか…手術のあとで…情

報の取り引きに応じた時だ」

「ああ…そうだった」

「すべてがあの女の陰謀かも知れな

いんだぞ?…公安とは思えんずさん

な対応だな」

「ゆっくり…話したかっただけだ」


もう勘弁してくれと言わんばかりに

彼の父親は首を横に振った


「すまない…君のお兄さんの件を早

く話そう」

彼の父親は僕をチラッと見た

「だがこの前振りはお兄さんの失踪

と関係があるんだ」