失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】




彼の言葉に彼の父親は固まった

そしてゆっくりと手を口元に当て

眉根を苦しそうに寄せた

愛されていなかったと

彼が母親を憎む気持ちの

源が見えた気がした



「本当か…」

「ああ…残念だがどっちも本当だ…

売られたのも…写真がばらまかれて

いたのもな」

彼は苦笑した

「あの女の遺言にメモがついていた

んだ…命に関わることがあったら警

察でこの名前を出してその男に自分

の誕生日を言えってね…調べたら公

安のお偉いさんじゃないか…笑った

よ…なんの弱味を握られているんだ

とね…内容がないのが変だと思った

が…私の誕生日でこの男が父親の候

補の一人だとわかった…それまでも

何人も候補はいたがな…死んだ女の

伝言は思った以上に効果があって驚

いたよ…死せる孔明生ける仲達を走

らすってわけだ…」

彼の父親は少し呆然としながら

呟いた

「…12月6日…お前が事故現場から

私を呼んで私の耳元でそう囁いた時

私は一瞬頭の中が真っ白になった…

まさかそんなことがこんなところで

起きるとは…」