失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】




彼は遠くを見るような目をした

この過去は誰かに語られたことが

あったんだろうか

たった独りで抱えて

ここまで来たのではないだろうか

秘密を抱えて生きる苦しさを

僕はいやというほど知っている

孤独と恐怖に満ちた日々を



「…12月6日」

呟くような声で話が再開した

「それから2年毎に…写真が送られ

てきた…差出人不明…子供の手の写

真だ…最初は新生児みたいな小さな

手…だんだん幼児の手になり…小学

生くらいの感じになり…一枚ごとに

手は成長していった…写真には必ず

日付があった…12月6日…12月6日

…12月6日…手紙はいつもその日の

後の1週間以内には必ず届いていた

…最初は脅迫だと思った…そしてそ

の差出人はあの女だと確信していた

封筒の中から微かに香る香水の匂い

は…私の知っている香りだった…わ

ざと分かるように着けたのだ…だが

写真の他にはなんの挙動もなくただ

2年ごとに写真が送られてきた…そ

してそれは…6枚目で途絶えた…私

はこの子供が死んだのだと思った…

私はいつもその手紙が来るのが怖か

った…だが7回目が来なかった時…

私はそれを心の底で待っていたこと

に気づかされた」



それを聞いた彼の呼吸が

一瞬止まるのがわかった