失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】




「あの女は巧みに私に好意を持って

いる振りをして私の素性を探ろうと

していた…私も同じ手で彼女に迫っ

た…嘘の愛を互いに囁いているうち

に私は本気になりかけていた…彼女

の方が一枚上手だったのだ…自分で

もマズいと感じ始めてていたその頃

もう一つのチームがニセの情報を流

し陽動を成功させ内通者があぶり出

された…それをあの女は私より先に

知った…そしてなぜか私に諜報員の

居場所を私に教えた…内通者が吐く

前にこれで出世しなさいと言わんば

かりに…そしてその直後…彼女は姿

を消した」



一気に語られたあと

しばらく沈黙があった

語る人の心の空白を表すような



「防諜は成功した…私の情報は内通

者の吐いたものと一致…あの女の情

報はガセネタではなかった…私は上

司からよくやったとほめられ組織か

ら評価を受けた…だが私は成果に対

する評価を素直には受け取れなかっ

た…それすら彼女の手の内にあるよ

うな違和感がそのあともずっと私を

悩ませた…」