失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】




「…彼女に近づくのは大変な慎重さ

を要した…なにしろ頭の切れる女だ

ったからな…学業を修めればその世

界では頭角をあらわしただろう…だ

があの女はその才知をすべて犯罪と

いう世界につぎ込んだ…生まれつき

のクリミナル…そういう種類の人間

がこの社会にいるということを彼女

との接触で私は思い知らされた…」



ずっと目を閉じたまま

父親の話を聞いていた彼が

いつの間にか目を開けていた

その目には苦渋のようなものが宿り

不意を突かれたような欠落感が

僕にも伝わってきた

初めて聞くこと…なのかも知れない

この話…彼も



「初めて会ったとき…なんでこの若

い女が特別なのかということを私は

理解出来なかった…だが接触が深ま

るにつれ私にはわかってきた…この

女は人が何を欲しがっているかわか

るのだと…それは私に対しても同じ

だった…私の無意識の欲望を彼女は

見抜いていた」



その能力

それは彼の独自の能力だと思ってた

能力は遺伝

冷酷な母親からの