「…彼女に近づくのは大変な慎重さ
を要した…なにしろ頭の切れる女だ
ったからな…学業を修めればその世
界では頭角をあらわしただろう…だ
があの女はその才知をすべて犯罪と
いう世界につぎ込んだ…生まれつき
のクリミナル…そういう種類の人間
がこの社会にいるということを彼女
との接触で私は思い知らされた…」
ずっと目を閉じたまま
父親の話を聞いていた彼が
いつの間にか目を開けていた
その目には苦渋のようなものが宿り
不意を突かれたような欠落感が
僕にも伝わってきた
初めて聞くこと…なのかも知れない
この話…彼も
「初めて会ったとき…なんでこの若
い女が特別なのかということを私は
理解出来なかった…だが接触が深ま
るにつれ私にはわかってきた…この
女は人が何を欲しがっているかわか
るのだと…それは私に対しても同じ
だった…私の無意識の欲望を彼女は
見抜いていた」
その能力
それは彼の独自の能力だと思ってた
能力は遺伝
冷酷な母親からの



