失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】




「私には詳しいことはわからないの

外部に洩らさないように彼はとても

慎重だったから…でも…いとこから

『ヤバい奴らとつるんでるからあい

つに釘をさした』って聞いたことが

あって…」

「ヤバいって…ヤクザとかかな」

「まあ…そんなとこ…かな?…今と

なっては想像しか出来ないけどね」



ヤバいヤツら



急に彼の顔が浮かんだ

もしや彼も兄の父親に

情報を流していた一人だったのか?

それは十分あり得る話だ

それなら二人の接点が理解できる



「でもね…彼が私と結婚してお兄ち

ゃんが生まれる前に彼は『俺たちの

家族のために危ない橋はしばらく渡

らないよ』って言って…それから仕

事も内勤になって…私にはそれは安

心だったし…彼が家族のこと一番に

考えてくれてるのが嬉しくて…でも

彼があの仕事から自分から距離を置

いたことにとてもびっくりしたの」



その本当の意味は

もう二度と聞きたくない話だ

それは母も同じだろう

それを示すかのように母は話を

全く違う方向に振った



「私と離婚してからは彼は新聞記者

をやめてしまったと聞いたわ…あの

人が亡くなってからお兄ちゃんから

聞いた話だけどね…三流週刊誌の記

者をして…最後は編集長だったって

言ってた」