「…そんなのどうでも…良かった」

「なぜ?…それも罪深いことなのに

なぜ二股はダメで近親愛とゲイは許

される?」

「受けとめたかったんだ…全部をね

兄貴が苦しんでいたから…楽にして

あげたかった…罪とか法とか…関係

ない…その兄貴を裏切ることは…僕

には許せない」

「だがな…」

彼は微笑んだ

「君の兄さんは許すだろう…君の苦

しみはまるで君の兄さんのトレース

…いや…今やそれ以上だ…痛過ぎる

…しかも誰にも言えないときている

君の兄さんは君がいたから毎日をど

うにかやり過ごしてこれたんだ…君

はその事で苦しんでいるんだろうが

その責任の一端は君の兄さんにある

のは明らかだ…君の兄さんなら君が

壊れることより嫉妬の苦しみを選ぶ

だろう…それは私も同じだ…だから

君を二人で面倒見ても良いだろう?

…兄さんと私とで…君に生きていて

欲しい…だからこの罪悪感を越えて

くれ…もう自分を責めるな」



彼の話す間に

僕はもう泣いていた


なぜ…こんなにあなたは

優しくなれたの?

まるで兄がもうひとりいるみたいに



「本当に…君は泣き虫だな…泣いて

るか悶えてるかしか今まで見たこと

がないくらいだぞ…脱水症状になる

まで泣くつもりか?」

また彼が悪態をつく

泣く子をあやしてくれるみたいに

「そんなこと言っても…止まらない

よ…あなたが…優し過ぎるからじゃ

ないか…」


そう言うと僕は号泣していた

今まで自分を責め抜いた苦しみを

全部吐き出すかのように