失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】




兄貴が…生きている

兄貴が…生きている

兄貴が…生きている

兄貴が…生きている…



彼の言葉が頭の中を回り続けた

少し意識が飛びそうなくらい

少し頭がおかしくなりそうなくらい



いまどうしているの?

どこにいるの?

なんでいなくなったの?

なぜ…あえないの?



彼の車でカフェから走り出しても

興奮と不安が入り混ざった

良くない緊張状態が続き

僕は助手席で自分の膝を

ギュッと抱え小さく丸まっていた

彼はそれを時々チラッと見ながら

黙って車を走らせていた





実家に到着すると彼は母に案内され

僕を抱きかかえるように

居間に連れて行った

「ひとりになりたいか?」

と彼は僕に尋ねた

僕は首を横に振った

「また…パニックとか…記憶なくな

ったら…怖い」

またフラッシュバックがきたら

僕は何をするかわからないから

絶対にこんな精神状態では

独りになるべきじゃないと感じた

「わかった…親御さんに説明する」

彼は心配している母に僕の状態を

簡単に話した

母は居間のソファーに毛布を敷き

僕をそこに寝かせた

上から軽い羽布団を掛けてもらい

僕は少し落ち着きを取り戻した