失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】




よく見ると彼は少し下を向いて

なにかを見つめているようだった

「…なんか…落ちてる?」

「よし…オールクリアだ…大丈夫

安全だ」

「……?」

僕はなんのことかわからずに

彼の顔を見た

「盗聴器のチェックだ…まったく…

ひとつなにかするのにも面倒だ」

彼はジッポのライターぐらいの

黒い金属の箱をチラッと僕に見せ

そのままスーツの内ポケットに

スッと入れた

「盗聴器センサーだ」

「も…もしかして…僕らの関係がバ

レた…とか?」

僕は心臓がバクバクしてきた

「それはいいな…君と本庁のエント

ランスでキスしてみようか?」

彼はふざけた口調で僕をからかった

「じゃあ…なんで?」

「…それをここで話したかった」

彼がマジな顔になった

「なにか…あったの?」

「君の兄さんのせい…だぞ」



バクバクしてた心臓が

一瞬止まった