「案外動くじゃねーかよ」

ヤツは嬉しそうに言ってくれた

「ずいぶんリハビリ進んでるんだな

お前のお母さんは指先が麻痺してる

からって心配してたんだよな」

「麻痺は少しずつ良くなってる…今

は皮膚がピリピリしてて痺れが抜け

始めるときだって」

「大丈夫じゃね?…なんか安心した

わ…お前がギター持ってない方がな

んか不自然だぜ」




僕がギターを抱いてる

そのことを思い出すのすら

苦痛だったのに…

コイツが来てくれたから…だな

僕の重荷はお前を裏切ったことを

自分で責め続けていたからだと

今はっきりとわかった気がした

許されてる…コイツから


それ以上に心配までしてくれて

そう思うと胸が熱くなった



「またオリジナルやろうぜ」

ヤツが口をへの字にして言う

「うん…そうだな…」

僕は救われてる

「…ありがとな…ほんとに…」

「ん…まあな…天使だしなオレ」

ヤツはニヤッと笑って

ヤツらしく受け答えた



そんじゃまた来るわ…

と一言残して帰って行った




ギターを壁に立て掛けて眺めた

また…これに触れる

気持ちが解放されたのがわかった

デジタルプレーヤーのイヤホンを

耳に入れた

あれから聴けなかった曲が

耳から流れ込んできた



あの人のブラームス

そして続けて

僕たちの作ったあの曲が