「もう…泣くな…泣いてるのを見る

と欲情する…」

彼は普通に言った

「な…なんで…なんで謝るの?」


僕は泣きながら彼にきいた

彼は渋い顔をして言った

「…八つ当たりだ…こんな年下の…

しかもヤク中のリハビリ中の君にな

…助けたはずの君を死なせるところ

だった」

「僕が…傷つけたのに?」

彼は信じがたいと言わんばかりに

天井を見上げた

「君はなんでそんな聖人みたいな理

想を自分に課すんだ…潔癖すぎて呆

れる…こんな時に普通は正気でいら

れるわけないだろう?負わなくてい

い責任を負うのをやめろ」

彼はティッシュを取り

僕の涙やら鼻水を拭いてくれた

「…正直…君の話を聞くのはとても

辛い…君の兄さんが隣に見えるよう

で…まあ…当たり前だ…当たり前だ

が実際聞くと身体が震える…君を落

とすなんてそれじゃ無理なんだが…

私は子供なんだ…不愉快には耐え難

い…だが欲しいものは欲しい…葛藤

は激しい」


彼はため息をついた

そして点滴のつながった左手を

包帯の上から指でなぞった

「この包帯を取りたいな…君が私に

逢うために切り裂いた傷が見たい」


彼はそう言うとベッドに

深く座り直した

彼の顔が僕に近づく

だめだよ…そんな…至近距離で…

僕がうろたえるのも構わず

彼は耳元に口を寄せて囁いた

「淋しいなら…埋めてやる…なんな

ら君の罪を肩代わりしよう…無理や

り犯されたと言えばいい」



その瞬間

僕の唇は彼の唇に塞がれていた