「…思い…出し…た」


僕は息を飲んだ

彼はゆっくりと僕を見た

僕の唇は震えていた


「あのとき僕は…本当に死にた…か

った…だってみんな…僕のせいで苦

しんで…傷ついて…だから…そばに

居ては…だめ…僕のそばに居ちゃい

けないんだ…さびしくても…僕は…

独りでいなきゃ…でも…凍るほどさ

びしくて…辛くて…独りでいるくら

いなら…死んだ方がいいって…思っ

た…ここで死ねば…死ぬ間際には…

もしかしたらあなたが…そばに居て

くれるかも知れない…って…」


言ったとたん

今までの孤独と苦しさが

堰を切ってあふれてきた

むせぶように僕は泣いた

嗚咽が止まらなかった


「逢えないのは…わかってる…僕は

兄貴のものだ…裏切ることは出来な

い…でも…」


心が引き裂かれる

激しい胸の痛みが背中まで貫く

息が出来ないくらいの苦痛



「あなたが…好き…なんだ」



やっぱり死にたい

僕が悪い

人間として

…クズだ




彼のこと…見れない

兄貴…ごめんなさい

僕がズルい

弱すぎて

呆然とするくらい


「ごめんなさい…僕が…悪い…」


彼は椅子から立ち上がった

行ってしまうんだ

やっぱり

でも…お願い…そうして

僕に応えないで



だが立ち上がった彼は

ベッドの端に腰かけた



「…悪かった…泣くな」



僕は驚いて彼を見上げた

彼の言葉は

謝罪だった