失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】




唐突に僕は彼の腕の中にいた

そうだったんだ

兄の他にたった一人

この人だけだ

この人だけは本当の

僕達兄弟の秘密を知ってる

僕の苦しみを理解できる

神父でなく

この人が


僕は人の世の裏腹さに

心底震え

そして嬉しさに泣いた

出逢った時は

悪魔だったこの人が…




「それでは…遠慮なく君を抱こう…

今なら私は君を落とせるかも知れな

いな…クスリと淋しさで君を操って

ね…」

彼は僕を静かにベッドに横たえた

シャツの裾を捲りあげられた途端

鋭い痛みが走った

彼は火傷の傷口を指で拡げていた

「君は逢うたびに私の好きな傷口を

つけてるな…ぼろぼろの君を見てる

だけで欲情する…もっと壊してしま

いたい」

彼は冗談ともつかないことを囁いた

「私は君を買い損なった彼より残酷

な人間かも知れないぞ」


あなた…変わらないね

やっぱり悪魔みたいだよ

それでもいい

僕が…僕の方が

もっと欲情してる

あなたに