彼はそう僕に問いかけた
「なぜ淋しかったんだ…君は愛され
ていたはずなのに」
それを聞いて僕は
心臓をつかまれるような思いがした
答えようとして口を開いた
だけど口からはなんの言葉も
出せなかった
酸欠の魚みたいに口を開いたまま
僕は言葉もなく喘いでいた
彼はすぐその異常さを理解した
「君の兄さんは…どうしたんだ」
「い…な…い…」
「…まさか」
彼は驚いて僕を見た
「いない…んだ…失踪…したんだ」
「いつからだ?」
「去年…の…7月…」
彼は目を伏せた
「私のせいか…」
僕は首を横に振った
「わからないんだ…なんにもわから
ないんだ…だって…僕達…前の日ま
で幸せに暮らしていたんだ…」
「警察には届けたのか?」
「届けたよ…その日に届けたよ…で
も書き置きがあったから失踪者と
認定してもらえなかったんだ…ただ
の…ただの家出…だって」
「手がかりが無いのか」
彼は驚いたように僕に尋ねた
「興信所にも頼んだよ…だけどダメ
なんだ…興信所だって一社だけじゃ
ない…でも生死すらわからなくて…
支えあってた家族もバラバラになっ
た…僕は兄貴とのこと…誰にも言え
なくて…当たり前だよね…言える訳
ないよね…手がかりになるかも知れ
ないのに…苦しくて親父の酒を盗ん
で…もうその頃から僕アル中になっ
てた…クスリより前にもうアル中だ
ったんだ」
彼は身じろぎもせず僕の話を
じっと聞いていた
「アルコールでダメになりかけたと
きにね…僕はもう一度だけ立ち直る
気持ちのきっかけを掴めた…僕は…
信頼してるある人のところで…そこ
は秘密を守ってくれるところだった
から…心の重荷を…兄貴とのことを
吐き出したかったから…僕は…その
人に打ち明けた」
そう…神の御許で
あなたの無事を願ったあの教会で
「だけどその人は僕を兄貴の犠牲者
だと言った…兄貴はその報いを受け
た…罪を償わなくちゃならないって
…僕と兄貴は離れて当然だって…そ
れが神の意志だって」
最後は叫んでしまうかと
自分でも思ったその時
彼はベッドに腰をおろし
僕の口を手でふさいだ
「君がこんなになった理由が…よう
やくわかった」
そして彼は僕を抱き寄せた
「今は嫉妬は置いておこう…」



