失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】




「…わから…ない」

「そうか」

彼は上着を着た

「買い物に行ってくる…待ってろ」

「行かないで…って…言いたい…」

僕は呟いた

「わかってる」

彼は真顔で言った

「ちょっと我慢しろ」

そう言うと彼はホテルのバスローブ

の紐を二本持ってきた

そして僕の足と腕を縛り始めた

「な…なに…やめて…!」

「シャブの妄想が出るとマズいから

な…まだ完全に安全なわけじゃない

君のためだ…部屋を出ないようにす

るだけだから…わかるか?」

意識の混乱した今の僕には

必要なことなのかも知れないけど…

「イヤだ…外して…このまま僕を

置き去りにするの?」

彼はベッドから掛け布団を剥ぎ

僕に掛け少し微笑んだ

「ちゃんと帰る…食料と服を調達し

てくる…いいか…シャブの妄想は

危険なんだ…自分で自覚してないか

らな…今の君はまだそんなに妄想に

冒されていないのかも知れないが…

混乱してることは確かだ」

彼は立ち上がりドアに向かった

「すぐ帰る…悪いが我慢してくれ」