失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】




全身の脱力感と震えでまともに

歩くことすら出来ない

彼は部屋まで僕を抱えて運び

入り口の側のソファーに座らせた

僕は意識すらまともじゃなくなり

いま自分がどこに連れて来られたか

意味がわからなくなりかけていた

それでも彼がいまここに生きて

僕を助けてくれたという奇跡が

僕の崩壊をとどまらせていた

「ひどいな…どれくらい盛られたん

だ?」

ソファーに僕を横たえながら

彼はため息をついた

「いま…何月?何日?」

「3月10日だ」

「そ…う…」

「カレンダーもなかったのか…」

「時計も…なかった…」

彼はホテルのコップに水を入れて

僕のところまで持ってきた

言いたいことも訊きたいことも

多すぎてなにを言えば良いのか

わからなかった

でも…なんで彼はあの客の部下に?

「なんで…?」

それを訊かずにはいられなかった