「では…始めますか」
客の声のトーンが下がった
この場所は屋外だった
ライトは客の車のヘッドライトで
僕らを確認したあと
そのライトが再び消えた
ビルの廃屋の裏のような
人気のない薄明かりの中で
慣れた様子で男の指示通りに
部下が車からなにか運び出している
それを客の男が部下に確認させた
目で合図する部下に客がうなづく
客の車からもアタッシュケース
のような黒い手提げが2つ
運ばれてきた
男がそれを自分で確かめる
ぎっしりと詰まった現金の万札を
なん束か抜き取り手でさばいた
「では…その子をこちらへ」
「……」
男は片手で僕の肩を抱き
客の方に僕と一緒に歩いていった
(さよなら…)
僕は心の中で呟いた
また…こんな気持ちで別れるんだね
それはあの人との別れのようで
再現を見せられてるみたいだった
僕はこの人を愛したのかな…?
それはよくわからなかった
客の目の前に僕は押し出された
「お望みのもんだ…ではこれで」
客は手錠をつかみ僕を引き寄せた
「無事終了だね…また連絡するよ」
僕の肩から男の手が離れた



