失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】




その時黒い袋を通して

暗闇にライトが点くのが見えた

ここが外なのか屋内なのか

判然としない

ホコリと排気ガスの臭いを

微かに感じることができた

部下の誰かが隣で僕を制止している




「時間に正確なのは良いね」

聞き覚えのある声がした

あの若い客だった

「待たされたらキレちゃうし」

「あんたにはキレられたくないです

ね…組長から怒られる」

男の答える声がすぐ隣から聞こえ

僕はドキッとした

僕の肩に触れていたのは

部下じゃなかった

(そばにいたんだ)

布の奥で僕は微笑んでいた


「あんたでもそんなこと言うんだ」

客が面白そうに答える

「意外ですかね…?」

男は無感情に言った

足元がふらついているので

僕は男の腕に寄りかかった

(…ありがとう)

僕は布越しに囁いた


「来たね…君も!」

客は機嫌良さそうに笑った

僕のことだ

男はいつものように無言だった

「袋を取ってくれ…確認だ」

男の手が僕の頭に触ったとたん

闇が一瞬で取り払われた

「う…」

目の前が急に明るくなり

まぶしくて僕は目を背けた